こんにちは。千葉県流山市にある歯医者「ABC歯科クリニック」です。

「歯周病になると外科治療が必要って本当？」と疑問を持っている患者さまもいるでしょう。歯周病が進行すると、歯茎の奥で歯石や汚れが深いポケットを形成し、ブラッシングだけでは除去できなくなることが多くなります。

こうした状態を改善するため、歯科クリニックで検討されるのが外科治療です。外科治療では局所麻酔下で歯茎を切開して、処置を行います。

ただし、全ての患者さまに実施できるわけではなく、治療が難しいケースも存在するため、注意が必要です。

この記事では、外科治療が必要になる典型的なケースから、治療を受ける際の注意点までをわかりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。

歯周病の外科治療とは

歯周病が進行して歯周ポケットが深くなると、スケーラーや超音波器具だけではプラークや歯石を完全に除去できません。そのため、外科的に歯茎を開いて直接汚れを取り除き、失われた組織の回復を図ります。

外科治療の種類

外科治療の主な方法は、以下のとおりです。

フラップ手術

器具では除去困難なプラークや歯石を取り去るため、歯茎を切開して歯根面を露出させ、直接清掃する方法です。歯周ポケットが深い箇所に行います。

切開後は視野が広がり、器具の届かない歯根面の歯石や汚れまで確実に除去できます。術後は縫合して数日で回復し、定期的なメンテナンスで健康な状態を長く維持することが可能です。

歯周組織再生療法

歯周病で破壊された歯槽骨や歯周組織を再生させる目的で行う治療で、いくつか種類があります。

リグロス法は、ヒト由来の成長因子を含む薬剤を用いて、歯槽骨欠損部に塗布する再生療法です。まず歯茎を切開し、歯根に付着したプラークや歯石を丁寧に除去します。

続いて溶けた骨の部分にリグロスを塗布し、縫合後に約１週間で抜糸します。2016年から保険適用となり、安価に受けられるようになりました。

ただし、欠損部が大きすぎる場合や周辺組織が不十分なケースでは、薬剤が流れ出て効果が得られにくいです。

エムドゲイン法は、豚歯胚由来のタンパク質を主成分としたエムドゲインを使用する方法で、手順はリグロス法とほぼ同様です。プラークや歯石の除去後に薬剤を塗布し、縫合して治癒を待ちます。組織再生の面では高い評価を受けています。

保険適用外の自由診療となるため、治療費は全額自己負担です。

歯周形成手術

歯周病で下がった歯茎を他部位から採取した組織で補い、外観と機能を回復する手術です。歯根が露出して知覚過敏や見た目の悪化を招いている場合に行います。

まず、口蓋などから健全な歯茎組織を採取し、移植先に固定します。適切に定着すると歯根を覆い、痛みや異物感が軽減します。治療後はブラッシング指導や定期検診を受けることで、再発を防げるでしょう。

歯周病の外科治療が必要になるケース

外科治療を検討する必要があるケースは、以下のとおりです。

歯周ポケットが深くなったとき

健康な状態では、歯周ポケットの深さは1～3mm程度です。歯周病が進行して歯周ポケットが6mm以上に達すると、ブラッシングやスケーリングによる清掃で汚れを除去するのが困難になります。

特に、奥深い部分に歯石が蓄積すると細菌バイオフィルムが残存しやすく、フラップ手術などで歯茎を切開し歯根面を露出させる必要があります。

歯の動揺が目立つとき

歯槽骨の吸収が進行すると歯がぐらつき、咀嚼時やブラッシング中に痛みを感じる場合があります。動揺が強いと噛み合わせが不安定になることもあるでしょう。このため、歯茎を開いて歯根面を清掃し、場合によっては歯茎を補強することが求められます。

歯周病が重度にまで進行したとき

重度の歯周病では、歯槽骨が広範囲に溶かされており、歯を支持する組織が著しく失われるケースがあります。こうした場合、スケーリングなどの清掃では不十分です。そのため、歯茎を切開して付着物を完全に除去する外科的手法が適応となります。

歯槽骨の欠損が大きい部位では、リグロス法やエムドゲイン法などの歯周組織再生療法を併用することで、骨や歯根膜の再生を促します。

歯周病の外科治療を受けられない方

歯周病の外科治療を受けられない方は、以下のとおりです。

止血困難な血液疾患のある方

血小板減少症や血友病などの止血機能に異常が現れる状態の方は、術中・術後の大量出血リスクが高まるため外科的処置を原則行いません。抗凝固薬を常用する患者さまも同様で、一時中断が難しい場合には外科治療自体が不能です。

こうしたケースでは、歯茎を切開した際に止血コントロールが困難となり、合併症発生の危険が増大します。手術を実施するリスクが高い場合は、まず担当医と連携し、内科的な管理下での治療可否を慎重に検討する必要があります。

全身疾患の既往がある場合

心疾患、糖尿病、高血圧などの持病を抱える患者さまは、術前に歯科クリニックと内科医で入念なリスク評価を行う必要があります。特に、血圧コントロールが不安定な場合、術中・術後の出血や感染、傷の治癒遅延のリスクが高まります。

妊娠中の患者さま

妊娠中はホルモン変動が大きく、歯肉出血や浮腫、傷の治癒遅延が起こりやすい時期です。このため、歯周病の外科治療も原則として妊娠期間は避けるべきですが、緊急性が高い炎症や感染がある場合は歯科医師と相談のうえ、適宜対応します。

喫煙習慣のある方

喫煙は歯肉への血流を低下させ、術後に傷の治癒を阻害します。そのため、可能な限り術前から禁煙を推奨し、傷の治癒期間中はタバコを控える指導が必要です。

初期歯周病の方

ポケット深度が4mm未満の初期段階では、スケーリングやルートプレーニング、ブラッシング指導による非外科的治療が大部分を占めます。歯周ポケットの深さが6mm以下であれば、外科手術ではなく、非外科的処置で歯周病を改善できるでしょう。

セルフケア方法を改善中の方

セルフケアが不十分な患者さまは、術後の出血や感染リスクが高まるため、まずはブラッシング習慣の徹底やプラークコントロールの指導を優先します。患者さまが適切な口腔ケアを実践しない限り、外科治療を行っても成功率は著しく低下します。

歯周組織の再生が期待できない方

極度に進行した歯周病で歯槽骨がほぼ失われ、歯の支持を得られないケースでは、外科的介入による組織再生の効果が期待できません。歯が動揺しすぎて保存不可能と判断される場合は、残念ながら抜歯が必要です。

このような場合は、歯周外科手術よりも義歯やインプラント治療など別の選択肢を検討します。治療計画を立てる際は、歯科クリニックで歯周組織の喪失度合いを正確にチェックしてもらうことが重要です。

歯周病の外科治療を受けるときの注意点

歯周病の外科治療を受けるときの注意点は、以下のとおりです。

術前の全身状態とリスクをチェックする

外科手術では出血や感染のリスクが高まるため、まず既往歴や内服薬を歯科クリニックで詳細に伝えてください。特に、抗凝固薬を使用している場合や糖尿病、高血圧、心疾患がある場合は、内科医との連携が必要です。

血液検査や心電図検査を行い、術中・術後のリスクを最小限に抑える体制を整えます。また、妊娠中や授乳中の女性はホルモンバランスの変化で治癒が遅れるため、治療のタイミングや方法を慎重に検討してください。

術前後の口腔ケアを徹底する

手術を行う前に、ブラッシング指導やスケーリングでプラークを可能な限り減らします。歯茎を切開すると術後の感染リスクが高まるため、清潔な環境をつくることが重要です。

術後は縫った糸がある部分に食べ物のカスが残りやすいため、柔らかい歯ブラシやうがい薬を使った優しいケアを続けてください。定期的に歯科クリニックでのチェックを受け、傷口の状態やブラッシング方法を確認してもらうことで、回復をサポートします。

処方された薬の服用と止血を怠らない

術後の痛みや腫れを抑えるため、鎮痛薬などが処方されることがあります。用法・用量を守り服用してください。

また、抗凝固薬や抗血小板薬を服用中の患者さまは、担当医と相談のうえ一時的に休薬したり、代替薬を使用したりする場合があります。止血が不十分だと術後出血が長引くため、出血が続くときは我慢せずに歯科クリニックへ連絡してください。

喫煙や睡眠など生活習慣の改善

喫煙は血流を悪くし、歯茎や骨の治癒を遅らせる要因になります。治療前後は可能な限り禁煙し、少なくとも術後1週間はタバコを控えてください。また、アルコールの摂取や疲労も回復を妨げるため、十分な睡眠とバランスのとれた食事を心がけましょう。

生活習慣を見直すことで、外科治療の効果を高め、長期的な歯周組織の健康維持につながります。

まとめ

歯周病が進行し、歯周ポケットが深くなると、通常の清掃では対応しきれず外科治療の検討が必要です。具体的には、フラップ手術で直接歯根面を清掃したり、歯周組織再生療法で失われた骨や組織の回復を目指したり、歯周形成手術で歯茎の形態を整えたりする方法があります。

ただし、全身疾患のある方、妊娠中の方、喫煙習慣のある方など、外科治療を受けられないケースや注意が必要な場合があります。治療を受ける際は、歯科医師と十分に相談し、術前後の口腔ケアを徹底し、生活習慣の改善に努めることが大切です。

外科治療は歯周病の進行を食い止めるための重要な選択肢の一つですが、適応を見極めてリスクを理解した上で臨むようにしましょう。

歯周病の外科治療を検討されている方は、千葉県流山市にある歯医者「ABC歯科クリニック」にお気軽にご相談ください。

当院では、マウスピース矯正やインプラント、一般歯科、予防歯科、審美歯科など、さまざまな診療を行っています。ホームページはこちら、 Web診療予約も受け付けておりますので、ぜひご覧ください。